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「愚者の楽園」初期再録集2に再録(初出は2011,3,27東京コミックシティ発行
珀黎翔×汀夕鈴
珀黎翔に隠し子が!初めての王の子の存在に激しく揺れ動く王宮。
後宮へ入った女に珀黎翔は…
者の楽園
     ***********

 白陽国にもうららかな春の日差しが降り注ぐ。若き王珀黎翔が治めるこの国は代替わりの時の混乱を経て、現在は平和な日々が訪れていた。
 「夕鈴様……夕鈴様……!」
 女官が夕鈴を探す声が聞こえる。
 「ほれ、呼ばれているぞ。いいのか?」
 そう声をかけてきたのは張元だ。この後宮の管理人であり、夕鈴の素性を知る数少ない人間の一人でもある。
 「わかっています。……今日はお妃のお仕事は少し暇があったはずなのに」
 「いつもより長く掃除をしているからじゃろう。お前さんが臨時花嫁だってことは国家機密だからのう」
 のんびりと言う張元に夕鈴は髪を整えながら振り向いた。
 「だってあの箪笥が磨けば磨くほど光るのでつい……」
 「お前さんは根っからの庶民だな」
 ほとほとあきれ果てたといった表情で張元はつぶやいてみせたが、その声の暖かさは夕鈴に対する好意が透けて見えた。
 夕鈴はこの後宮のたった一人の妃である。実質後宮の女主人と言ってもいい存在だった。ただし臨時花嫁である。本当の妃ではなく泉のようにわいて出る縁談を退けるために雇われたバイトだった。
 「夕鈴様……!、ただちにお部屋にお戻りください。陛下の使いということで李順様がお待ちです」
 「李順様が……?」
 夕鈴は首を傾げた。
 白陽国は比較的リベラルな国である。後宮は男子禁制がふつうだが、珀黎翔の側近である李順はよく珀黎翔とともに後宮を訪れている。後ろ盾のない妃である夕鈴のお妃教育を施すのも李順の役目だ。
 「今日は勉強の日だったかしら……?」
 急いで回廊を渡りながら夕鈴は先導する女官に尋ねた。
 「いえ、違うように記憶しておりますが……」
 女官も覚えがない様子であわてている。
 後宮のたった一人の妃である夕鈴には、居間や寝室以外に謁見の間もある。
 その謁見の間で李順は待っていた。
 「お妃様にはおくつろぎのところ、まことに申し訳ありません」
 李順は立ち上がると丁寧に一礼した。
 側付きの女官がいるので李順は表向きの顔すなわち王の側近が妃に対する態度で振る舞っている。
 こういう点はさすがに柳方淵とは大違いだった。柳方淵は一応は夕鈴に対し丁寧な言葉遣いだが、結構夕鈴が本物のお妃だったら大問題になりそうだと思うような言動が多々ある。
 李順は実質夕鈴の上司ながらそういうバイト関係は女官がいる間はちらりとも見せない。
 (さすがに……プロだわ)
 夕鈴は椅子に座ると、李順にも椅子を勧め、女官に目で合図を送った。
 「では、下がらせていただきます」
 夕鈴の人払いにすぐ女官は頭を下げて退室していく。
 人の気配がなくなるまで李順は口を開かなかった。
 「……で、どうかしました?」
 先に夕鈴が切り出すと、なんと李順は大きくため息をついたのだ。
 「はあ……どうしてこんなことに……」
 「……何かあったんですか!」
 思わず夕鈴は声をあげる。
 「ありました」
 ぼそっと李順はつぶやいた。
 「ひとまず今日は具合が悪いということで、食事を断ってください」
 「……えええ?」
 「それから何か……そうですね、酸っぱいモノをほしがるように。今日はそれ以外食べてはいけません」
 「なんですか!、それ……!」
 食事を断れ、食べていいのは酸っぱいモノだけと突然言われても納得できない。
 「事情を聞きたいですか?」
 李順の言葉に夕鈴はうなずいた。
 「当然です!」
 「……陛下の隠し子が現れたんですよ」
 その言葉に夕鈴は息を飲んだ。
 「いや、正確には隠し子をはらんでいるという女性が現れたんです」
 「…………っ……」
 夕鈴は思わず立ち上がり、言葉も出ずに李順を見下ろしたのである。

   ******
 
 その一報がもたらされたのは、李順の来訪の一日前のことだった。遙か国境近くから早馬で届いた緊急の連絡だった。珀黎翔のお手がついたという女性を保護している。王の元へお送りしたいがそれでいいかという伺いである。ただのお手つきであれば放置もできようものだが、その女性は妃に迎えるという証の懐剣を持っていて、子をはらんでいると申し出ているらしい。そうすれば現在正妃のいない珀黎翔にとっては最初の子となる。
 その連絡は最初秘密裏に珀黎翔の元へ届けられたのだが、善後策を協議している間に翌日すでにその話は宮中中に広まっていたのである。
 「どう考えてもおかしいですよね」
 詳しい話は夜に改めてするという李順に、ひとまずは引き下がった夕鈴だった。
 そして今はすでに日が落ち、後宮に夕鈴と李順そして珀黎翔が集まっている。
 李順の要請に従って、まともな食事をしていなかった夕鈴だったが、夜やってきた珀黎翔と李順は簡単に食べられる食事を用意してくれていたので、それでこっそり食事をすませたところだった。
 「だって、変だと思いませんか」
 夕鈴はもう一度繰り返した。
 「秘密にしていた話が翌日には王宮中に知れ渡るなんて」
 「そうだよ」
 珀黎翔は夕鈴の傍らに座り、うなずいた。
 「もう王宮中大騒ぎになっているよ」
 「それはもう」
 一方李順は苦々しい表情を隠さない。
 「夕鈴殿が言った通りに振る舞ってくれて助かりました。ひとまず新たな話題も提供できたわけですし」
 「あらたな話題というのは……もしかして……」
 「そう、夕鈴殿にやってもらった例の偽装の件ですよ」
 「あ……やっぱり」
 夕鈴はため息をついた。
 食事を食べるな、酸っぱいモノを欲しがれと言われれば嫌でも何をさせたがっているのか予想がつく。
 「食事の件は本当にごめんね」
 珀黎翔が申し訳なさそうに謝る。
 「本当に簡単なものしか用意できなくて」
 「あ、それはまったく気にしなくて大丈夫ですよ、陛下」
 夕鈴は首を振った。簡単なちまきだが、庶民の食事である。夕鈴にとっては食べ慣れているものだ。
 「久しぶりに食べられてよかったぐらいです」
 「そう言ってもらえるとうれしいけれど」
 珀黎翔は少し気をとりなおした様子でほほえみかける。
 今日は後宮へ現れた後はずっと子犬陛下のままだ。
 「食事に関しては明日から改善できますから安心してください」
 李順はメガネをわずかに押し上げた。
 「おそらく女官たちが喉越しよく体によく、たぶん妊婦が好むだろう食事を作って持ってくるでしょうから」
 「でも……女官たちには悪いことした感じです」
 夕鈴はため息をついた。もう3月部屋も暖かくなってきたというのに、寝台にも掛け布が追加され、いかにも妊婦の部屋という感じである。
 「これ……きっと女官たちがっかりしますよ?」
 「大丈夫です」
 李順は、すっぱりと言い切った。
 「女官たちにとって仕える主がさらに世継ぎを身ごもったかもしれないというだけで喜びですから。後で風邪だったのだと言っておけばいいんです。次の機会があるかもしれないと希望がもてますし」
 「……そういうモノでもないかと思うんですけれど……」
 夕鈴の言葉を、李順は軽くはねのける。
 「こちらにとっては予想もしない隠し子騒動の方が百万倍大事です。女官のぬか喜びにかまっていられません」
 李順の判断基準は徹底していて明快だった。
 「ところで……何で私がこんな偽装をしたのか伺ってもいいですか?」
 夕鈴の問いに答えたのは珀黎翔だった。
 「それはね、そんな女が名乗り出てくるぐらいだったら夕鈴が僕の世継ぎを……て噂を流した方が信憑性がでてくるだろう?」
 「……まじめにお伺いしているんですけれど」
 「いや、夕鈴殿」
 李順がため息をついた。
 「陛下の言い方には多少問題がありますが、それは理由の一つなんですよ」
 お世継ぎが生まれるのかもしれない。それだけで宮中は大揺れになった。
 何しろどこの誰ともわからない女、しかしその女は王の下賜した懐剣を持っているのだ。なによりの証拠となる。呼び寄せて後見をと申し出る貴族が出る一報、様子見にはいる貴族もいる。
 そこに夕鈴が懐妊したのかもしれないという情報がひそひそと流れたのだ。
 「何しろ、どこか遠くの女よりも、目の前で寵愛著しい妃が懐妊したかもしれない情報の方が遙かにインパクトがありますから」
 李順はため息をついた。
 「表向き夕鈴殿は後ろ盾になる貴族の背景を持たない身元不明の妃ということになっています。別の言い方をすると私が一応曲がりなりにも夕鈴殿の身元保証人ということになっているんですよね〜〜」
 「そうだったんですか。知りませんでした」
 「いつでも臨時花嫁のバイトをすげ替えられるようにそうしておいたんです」
 李順はうなった。
 「今日は一日大変だったな、李順は」
 珀黎翔が口を挟む。
 「どうして……私が懐妊したかもしれないで、李順さんが大変になるんですか?」
 「あなたの後見を引き受けているのは私ですからね、夕鈴殿」
 夕鈴の問いに答えたのは李順だった。
 「懐妊の噂が流れたとたん、それは大変なことになりましたとも」
 李順はため息をつく。
 「単独で陛下に取り入ろうと考えてきているのか、陛下の側近で忙しいだろうから代わりに夕鈴殿の後見を引き受けたいとか……ああ、権力を一手に集めると他の貴族に恨まれるぞとかも言われましたね……」
 李順が遠い目をする。
 そこまでくるとほとんど恨み言の域である。
 「……それは、知らないところでご迷惑をかけていました」
 「いや、いいんですよ。それはこうなるかもしれないとわかった上でこの作戦を考えたんですから」
 李順は気を取り直したように珀黎翔へ視線を移した。
 「さて、では夕鈴殿の前ですし、あえて怖くて聞いていなかったことをお伺いいたしましょう」
 李順はもう一度メガネを押し上げた。それから珀黎翔をにらみつけつつ言葉を継いだ。
 「陛下、今回の女性の件、覚えはあるんですか、ないんですか」
 「それがなあ……」
 珀黎翔が口ごもる。
 「自分の中では覚えがないんだけれど……」
 「……っ、それってあるかもしれないってことですか」
 夕鈴は思わず声を上げてしまった。
 「いや、だからさ」
 珀黎翔は夕鈴からわずかに視線をそらした。
 「今まだ妊娠しているかどうか確定情報がないだろう?。もう夕鈴と出会って数ヶ月。もしもその人が僕の子供をといったら……浮気したことにならないか?」
 「だから……どうして浮気なんですか!。私と陛下は別にそういう関係じゃありませんし!」
 そう言いながら夕鈴は考えていた。
 どうしてこんない胸がちくちくと痛むのだろう。珀黎翔はこの国の最高権力者。確かに夕鈴が来る前に妃の噂は聞いたこともない。それに恐れられつつも女官たちの羨望の的であることも知っている。
 決まった女性がいなくても仮にも王なのだ。それなりの女性がいてもおかしくはない。
 (だいたい今だって陛下とそういう関係じゃないし)
 夕鈴は口の中で言い訳をした。
 夕鈴に何かを言う権利などないはずだ。
 「覚えはないということですね」
 李順がだめ押しをする。
 「うん」
 珀黎翔がおとなしくうなずく。
 「それに、その女は僕が懐剣を渡してもしもの時はこれを持って城へこいと言ったんだろう?。そういうことなら自信をもって言えるんだけれど、全く覚えがないんだよね」
 今の珀黎翔は子犬陛下だ。もう耳を垂れているのがわかるぐらいしょんぼりして見える。
 「でも、こんなやり口を敵が仕組んできたっていうのは、陛下の過去の所行のためですよね」
 容赦のない李順の言葉に珀黎翔は言い返さずにうなずいた。
 「わかっているよ。反省もしているし……夕鈴の前ではあまり言うなよ……」
 「私の前ではあまり言うな……?」
 夕鈴は首を傾げた。
 それってどういうことだろう。
 「まあ、陛下の所行については反省していただいていることですし、あのときは戦場でしたし、今は夕鈴殿一筋なのですからいいとして」
 李順はメガネを押し上げた。
 「あの!、そこ間違っていますから!」
 夕鈴はあわてて李順を遮った。
 「私はただのバイト。臨時花嫁です」
 「黙らっしゃい、バイト!」
 李順が一喝する。
 「そんなことわかっています!。ですが、陛下が夕鈴殿一筋に振る舞ってきたのは間違いありません。本来こんな噂話が出るはずもない。まして陛下は女が証拠として差し出した懐剣二は覚えがないと言っています。仕組まれたということでしょう」
 「……仕組まれた……?」
 誰に何のために仕組まれたのだろうと夕鈴が考えるうちに珀黎翔が言葉を継ぐ。
 「やっぱり敵が多いからなあ。今回は夕鈴を巻き込むことになってしまって、本当に悪いと思っているよ」
 「それは……いいんです。危険も仕事のうちだと最近思っていますし」
 夕鈴は歯切れ悪く答えた。
 そうだ。こういうことに巻き込まれるのは仕事のうちだとあきらめがつく。それなのにこんなに心が痛むのはなぜだろう。
 「…………夕鈴」
 珀黎翔が気遣うように夕鈴を見つめたが、それ以上は言う言葉がないようすで口を閉ざした。
 ややあって李順が顔を上げる。
 「……敵の特定は今できませんが」
 李順は小さくため息をついた。
 「ひとまず、この申し出てきた女性をどうにかしないといけません。敵なのか、それとも単に誰かに利用されていて、本当に陛下に手をつけられたと思っているのか、あるいは……」
 「王宮に入り込み、何かをもくろんでいるのか」
 ふと珀黎翔の口調が変わった。あの狼陛下の冷徹で決断をためらわない口調。
 ぞくっと身震いして夕鈴は李順へと視線をやったが、李順も同じだったようだ。幾分姿勢を正し、珀黎翔の言葉に答えた。
 「そう、その目的もあり得ます。王の子をはらんでいるとなれば他の貴族の手前、一度は王宮へ呼び寄せなければならない。真偽の判定のためにです。一度こういう話が出てしまうと、王にその覚えがないではすまないので。数年後に誰ともしれぬ幼児を押し立てて王位を譲れと貴族が蜂起する可能性があります」
 王の血を継ぐ存在に対しては常に慎重でなければならない。それを説明して李順はちらりと夕鈴をみた。
 「迎えをやるのですが……まさか後宮というわけにも行きませんし、どこか城下に宿を取らせるという形にするつもりです」
 「それが安全だろうな」
 珀黎翔はうなずいた。
 「……今の話だとその人……後宮へということになりませんか?」
 ふと疑問に思った夕鈴は聞く。
 珀黎翔の手がついた子供となれば将来の王太子候補だ。後宮で守り保護すべしという声があがってもおかしくない。
 だが、李順は軽く肩をすくめてみせた。
 「そうならないために夕鈴殿に偽装してもらったんですよ。もちろんいざ本当に陛下のお子を懐妊という事態になっても……」
 「だから、それはないって言っているだろ」
 珀黎翔が子犬陛下の表情で言う。李順は首を振った。
 「だから、どこからか現れたこの女の化けの皮をはがせなかった場合ですよ。……その場合も夕鈴殿が優先します」
 「……私……?」
 夕鈴の問いに李順はうなずいて見せた。
 「今現在、夕鈴殿は陛下に認められた妃なのですから。その夕鈴殿に懐妊の兆しありとなれば後宮にもう一人の妃候補を入れるという話は沙汰やみになるはず」
 「……そういう話が出たんですね?」
 夕鈴の問いに珀黎翔は安心させるようにほほえんだ。
 「大丈夫。まだ出た訳じゃない。だが、たぶん出るだろうなと思って手を打たせてもらったんだよ」
 「そうだったんですか……」
 こう言う時、やっぱり珀黎翔は狼陛下の名を持つだけのことはあるなと夕鈴は思わずにはいられない。国内の乱れた政治を立て直すために次々と様々な手を打ったという冷酷非情とまで言われた狼陛下の姿だ。
 「しかし今回の場合、女が偽物だということをはっきりさせないとならないのが問題だ」
 珀黎翔はため息をついた。
 「もちろん女が騙されて利用されている場合は会えばわかるだろうが……問題は女もぐるだった場合だな」
 懐剣が本物だとなれば、女のことは知らぬ存ぜぬでは押し通せなくなる。万一本当に子供をはらんでいたとしたら、数年後の内乱の火種となる。
 「女性を取り込もうとする貴族も現れるでしょうし……困ったことです」
 「ただ、利用されているだけか、それとも……」
 珀黎翔はまなざしに冷ややかな色を加えた。
 「いっそ、女の目的が私の暗殺だったなら問題がないのだが」
 それは狼陛下の声であり、まなざしだった。
 「そんなのだめです!」
 反射的に夕鈴は叫んでいた。幾分驚いたように珀黎翔が夕鈴をみる。
 ややあって珀黎翔は不思議そうな表情を見せた。
 「……どうして?。だって、僕なら相手を取り押さえるのはたやすいし……相手が訓練された暗殺者だとしてもだよ?。相手の目的がはっきりする上に僕の子供だという争乱の火種も消しされるし……一番いいと思わない?」
 「思いません!」
 夕鈴は強く首を振った。
 「だいたい……陛下が襲われるなんてだめに決まっています!。それはだめです。陛下がすごい武術をもっていらっしゃるのは知っていますけれど。もしかして怪我をするかもしれないじゃないですか!。陛下が怪我をするなんて絶対にだめです」
 部屋の中に沈黙が訪れた。ややあってぼそっと珀黎翔がつぶやく。
 「…………それってちょっとうれしいかも。本物の夫婦みたいだよね……」
 「……っ!」
 そう言われて夕鈴は思わず赤くなった。
 思えば思い上がりも甚だしいかもしれない。相手は王であり、夕鈴は下級役人の娘で雇われている身なのだ。本物のお妃でもないのに、珀黎翔の身を案ずる資格があるのだろうか。
 「あの……それは……その……」
 困り果てて夕鈴は言葉に詰まったが、そこに割って入ったのは李順だった。
 「仮定の話は時間の無駄ですから先に行きましょう。この女性を王都へ呼び寄せ、陛下と面通しをさせる前にまず懐剣の確認がございます。ほどなく王都にくだんの証拠の品が送られてくるでしょうし、その真偽の判定が下るまではこちらが動けるのはまあ……情報収集が関の山でしょうね。夕鈴殿には後宮にいていただき貴族どもの牽制に努めてもらえれば」
 「わかりました」
 李順の言葉に夕鈴はうなずいたのだった。




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珀黎翔×汀夕鈴

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